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何度目か忘れたが<『ローマ人の物語―勝者の混迷[上]6』(2002)> [本棚]

途中からでも読み始めてしまうとどんどん読んでしまうのが、『ローマ人の物語』です。この文庫版6巻はもう何度読んだか忘れましたが、また読んでいます。

ハンニバル戦記と呼ばれたポエニ戦役後のローマ世界が経験した混乱について読み始めて、そのまま進んでしまっています。

カルタゴとの戦争はそれまでの共和政ローマが経験しなかったことが次々と起こり、非常時体制の下、国民が一丸となって戦ったという意味では階級間対立などを解消するきっかけになりました。

しかし、少数指導制(寡頭政)のローマにおける非常時は、まさに指導層及びその予備軍が集う元老院への権力の集中を招いた。

元老院議員は経済活動が禁止されていたが、クリエンテス(非保護者、応援者)や解放奴隷などを使い、彼らの下に富の集中が進んでいた。

これでは貧富の差は大きくなる一方で、国民の義務であった兵役期間中に土地や収入源を失った者達の生活問題は解決しません。

そこで登場したのがティベリウスとガイウスのグラックス兄弟です。彼らはハンニバルを倒した名将スキピオ・アフリカヌス(プブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌス・マイヨル、或いは大スキピオ)の孫にあたります。

グラックス家はセンプロニウス一門に属し、平民だが、優秀な政治家を輩出する裕福な家柄であることから「平民貴族」と呼ばれ、将来は元老院入りし、国家を指導することが期待される実質的「貴族」だった。

グラックス兄弟は、時期はズレますが、護民官に立候補して、当選して、農地改革などに取り組みます。護民官というのは元々貴族に対して平民・庶民の権利を守る役割として登場した官職といえます。

このため、護民官は「拒否権」と「身体の不可侵」という権利を持っています。貴族が一方的に決めた法制度などを一般国民を代表して拒否するための「VETO=拒否権」の発動が可能です。また、命の危険がある状態ではきちんと職務を果たせませんので、身体の不可侵(危害を加えられない、殺されない)が保証されていました。

戦争後の経済的混乱(失業者対策)を収拾するには、農地改革を進め、失業者に収入を得る方法を提供しないといけません。

ただ、これは指導層を自認する元老院議員の反発を招き、まず兄ティベリウスが倒され、10年以上経ってから取り組んだ弟ガイウスも志半ばで元老院の陰謀により葬られるという結末を迎えます。

グラックス兄弟の失敗は、護民官として農地改革に取り組んだからという分析があります。将来元老院入りが約束されていたのだから、元老院議員になってから取り組めば、元老院の反対・反発は少なく成功したかもしれないと言われています。

実際にガイウス・マリウスや後に同盟者戦役で登場するルキウス・ユリウス・カエサル(ガイウス・ユリウス・カエサルの伯父)等は執政官の資格で種々の改革をあっさり通していることから元老院は同僚議員の立法には比較的理解を示すことが知られている。


下巻に続くところでは上記ガイウス・マリウスとルキウス・コルネリウス・スッラが登場し、軍隊が失業者を吸収する機能を発揮するようになっていきます。徴兵から志願制への所謂「軍制改革」です。

土地を失った者は志願して軍隊に入ることによって職と食を得られます。戦争がある時はいいのですが、ローマが地中海の覇者になって、戦争自体がなくなってしまっては、軍隊すら失業者を吸収する機能を発揮しなくなってしまいます。後は下巻で!

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<本のデータ>
ISBN 978-4-10-118156-x
ローマ人の物語―勝者の混迷[上]6
塩野七生・著、新潮文庫

内容(「amazon」の紹介文より)
紀元前2世紀半ば、強大国であったカルタゴを滅亡させ、ローマは地中海世界の覇者と呼ばれるようになっていた。しかしそのローマも次第に内部から病み始める。名将スキピオ・アフリカヌスの孫であり、若き護民官となったティベリウス・グラックスは、改革を断行すべく、強大な権力を握る元老院に挑戦するが、あえなく惨殺される。遺志を継ぎ護民官となった弟ガイウスの前にも「内なる敵」は立ちはだかる。

2021/02/09<曇>
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2月の表紙<日本橋の麒麟像> [研究日誌]

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自分の原点の一つは日本橋です。大学を卒業して最初に勤めた会社が近くにあります。

日本のすべての道路の基準点です。「全ての道はローマに通ず」ならぬ「すべての道は日本橋から発す」といったところか。

日本橋の麒麟には翼があり、飛躍の願いが込められているそうです。

そういえば昨年からの大河ドラマは明智光秀が主人公の「麒麟が来る」でしたね。

私も飛躍したいので、2月の表紙は以前写真を撮った日本橋の翼のある麒麟にしました。
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2021/02/09<曇>
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