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あのお方は何と評すか<『The Eagle』(邦題:第九軍団の鷲、2011)> [Movies 映画]

ローマ帝国の最北の領土「ブリタニア(=現在の英国)」で、20年前に行方不明になった第九軍団の痕跡を求め、マーカス・フラヴィウス・アクイラは百人隊長として赴任し、着任早々軍団の信頼を得るような活躍をします。

そのすぐ後、現地の先住民族との戦闘で負傷し、名誉除隊となります。

しかし、第九軍団と父の最期を知りたいマーカスは、奴隷エスカの協力を得て、ハドリアヌスの壁(長城)を越え、ブリテン奥地へと旅立っていきます。


アメリカ製のローマ帝国を舞台とした映画やドラマは大体おかしいというか、史実と違うことが多いですが、映画産業における興行的側面を考えると仕方がないのでしょう。

ローマ軍団とその戦い方、ローマ軍の駐屯地・基地・要塞、クレオパトラ、剣闘士、元老院などなど。

まず、人物の名前ですが、マーカス(マルクス)は当時ならば普通の名前で、多くの男性につけられていたので、正しいといえます。

苗字の「アクィラ」は鷲を意味するそうですが、この物語に合わせていると思われ、これもあり得ない設定ではありません。

ローマ共和制の将軍・政治家であるガイウス・ユリウス・カエサルの苗字「カエサル」は、先祖がハンニバル戦役の時に象と戦ったことからカエサルという名字を得たとの説があります。カエサルは、カルタゴの言語(フェニキア語)で「象」を表すと言われています。

そんなことから、マーカスの苗字も先祖の誰かが鷲を捕まえたのか、軍団旗の鷲に命を懸けて何かを実現したと思われます。

西暦140年の設定の映画ですが、当時のローマ軍団の戦い方はあれで正しいのか若干疑問です。『ローマ人の物語』を書かれた塩野七海さんはどう評価するだろうかと思いながら観ていました。

マーカスが取り戻したいと願い、映画の最後で実現した「軍団の鷲」象は各軍団の象徴であり、ローマ帝国の威信を表すものであり、奪われたら何をしても取り返す価値のあるローマ軍団の精神的支柱ともいえるものです。

西暦120年にマーカスの父が軍団を引き連れてブリタニアの奥地に進軍したであろうか。この軍団の進軍が失敗に終わり、防衛線の構築の必要性が高まったから西暦122年から北方の国境或いは防衛線としてハドリアヌス帝が壁(長城)の建築を始めさせたのか。

因みに、ハドリアヌス帝はローマ帝国の第14代皇帝で、拡大路線を放棄し、国境安定化を図った。ブリタニアでは壁(長城)を建設させて、国境を確定しようとしたと言われています。

映画の中でマーカスがお辞儀をする彫像はハドリアヌス帝のもののようでした。

一緒に北方に旅するエスカは元は奴隷だったが、途中で奴隷契約を解除して、「解放奴隷」となります。古代ローマ(共和制及び帝国)では、解放奴隷は土地の所有が認められたり、ローマ市民権を持つことができるようになりました。

邦題の「第九軍団」は、ローマが常設軍を持つようになった時に、組成された順に番号が付けられていたので、あり得る設定です。

この作品に登場する第九軍団は、紀元前58年以前にガリア遠征の際にカエサルが組成したものとされています。ガリアでの遠征の後もカエサルの指揮に従い、内戦開始となるルビコン川を一緒に渡りました。

この第九軍団がカエサル指揮下の部隊だとしますと、ブリタニアに派遣され、北方の防衛に従事していた可能性はあります。

批評家の評判は良くなかったようですが、私はなかなか良い作品だと思いました。


「The Eagle」(邦題:第九軍団の鷲、2011)
Director: Kevin Macdonald, 114mns
Stars: Channing Tatum, Jamie Bell, Donald Sutherland

2020/06/05<曇>
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