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ワクワク感が少ない<内乱記> [本棚]

ガイウス・ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』に続いて、『内乱記』を読みました。前回同様日本語訳ですが。

ガリア戦記と比べて難しい諸部族の名前はそれほど登場せず、民俗学的考察もないため、すっきりしているとの意見もあります。

しかし、あまりワクワクしません。理由は色々あります。

1.カエサルが遠慮して書いている感じする。内乱の場合、昨日の友は今日の敵、或いは親子で別々の側に立って殺し合っている状況などを考えると、なかなか躍動感ある書き方をするのも憚れたのだろう。
2.後世の歴史家に評価を問う形で書かれている感じがする。(ガリア戦記は自由にのびのびと好きなように書いて、自ら「記録」或いは「備忘録」としている。)
3.内乱後すぐに発表(刊行)していない点に、やましさがあったと想像される。
4.明らかに事実の誤りがあり、自分びいきに書いている点が後世の歴史家の批判を受けている。

私が最も大きな理由と考えるのは、やはりカエサルが遠慮して書いていると感じられるからである。

まだ生きている「内乱」経験者や関係者の親族がいる状況で、誰が悪人で、誰が国家の敵だったなどと名指しで言われては嫌な思いをするだろうし、そのまま「独裁者」として君臨することとなるカエサル自身が絶えず反乱の種を気にしながら新体制による統治を進めるには不都合を感じたのだろう。

「ガリア戦記」当時のローマ人のごく当たり前の考え方だったと思われる「文明化されたローマ人」対「未開の野蛮人=ガリア諸部族」の分かりやすい構図にはなりえない「内乱=ローマ人対ローマ人の戦争」がいかに国家を消耗してしまうかを考慮していたのか。

そして、新たな政治体制へと導こうとするカエサルの考え(ずっと元老院体制の限界を主張してきた)が一般の人たちに理解されるかどうかがはっきりしていないうちは刊行しない方が良いと考えたのか。

この後カエサルが暗殺されてしまうことを知っている我々にしてみたら、いろいろと言えます。

しかし、当時は自分の独裁の下、帝国の体制を整え、後継者と考えていたオクタヴィアヌスにそれを継承させるまで、まだまだ時間があると考えていたでしょうし、彼が軍勢を率いてルビコンを渡り、ローマ人同士が闘う内乱を引き起こしたかをローマ市民に理解してもらうには時間が必要と考えていたのでしょうね。

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<本のデータ>
ISBN 978-4061592346
「内乱記」
カエサル、國原吉之助訳、講談社学術文庫

古代ローマの運命を、内乱から平和へ、そして共和政から帝政へと大きく変えた英雄カエサルと政敵のポンペイユスとの対決を描く劇的な記録。前四九年ルビコン川を渡ったカエサルは、西はスペインから東はバルカン半島まで、北はアルプスから南は地中海を渡ってエジプトまでローマ世界を東奔西走して戦う。困難を克服し勝利するまでを、カエサル自ら迫真の名文で綴る、『ガリア戦記』と並ぶ重要史料。(「BOOK」データベースより)

2016/05/24<晴>
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